血圧の薬をもらうために 夫は二か月毎に病院に通っている。
そこの待合室で知人に会ったという。
どこが悪いのかと尋ねると もう一か月の余命もないんだと答えたという。
それも驚きだが すごい話を聞いたのだという。
手術を終えて 家に戻ると 箪笥の中の衣類が消えていたのだそうだ。
俺の衣類はどうした?と妻に聞くと
もう必要ないだろうから 全部 捨てた と答えたそうだ。
孫が見舞いに来たので 小遣いでもやろうと
ATMで お金を下ろそうとしたら 残高が 無かったそうだ。
メチャクチャさ
なんもかんも メチャクチャよ
独り言のようにつぶやいたそうだ。
かける言葉がみつからなかったそうだ。
ちょっと変わった奥さんだったけど
そんな事するようには見えなかったんだけどな。
と お前は大丈夫だろうな? というように 私の顔をみた。
数か月後に彼は亡くなり 初七日が過ぎた頃に 妻は家を出た。
彼と夫は一年ほど前 グループ旅行で一緒の部屋だったそうだ。
宴会で酒を飲み、酔った彼は 部屋に戻り
お前は俺の葬式に出てくれるか? と 涙を流しながら
何度も聞いたという。
奥さんにとって 彼はなんだったのだろう?
家庭を顧みず 人のために走り回った人らしいが
それが 気に入らなかったのか…
私の夫も どちらかといえば そういうタイプだが
奥さんの気持ちが理解出来ない。
人生いろいろ
夫婦もいろいろ ということか
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